« Cubic Earth 〜もしも地球が立方体だったら | トップページ | かご猫: くろのジャンプ 2題 »

2014年7月13日 (日)

江戸妖怪大図鑑 第1部「化け物」:なぜ「土蜘蛛」なのか? 国芳、芳年、ジブリ(?)

http://bit.ly/U4S5m4の続きです。

土蜘蛛といえば、最近では国芳の『源頼光公館土蜘蛛妖怪図』が一番有名である。Img_0

個性豊かに描かれた妖怪軍団をじっくり眺めるだけでも楽しい国芳の代表作の一つであるが、この作品に対する解説で必ず触れられるのは、老中水野忠邦による天保の改革への風刺的側面である。

代表的な解説としてWikiからこの作品部分に関する部分を引用しておく。

『源頼光公館土蜘作妖怪図』(1843年(天保14年))は、表向きは平安時代の武将源頼光による土蜘蛛退治を描いたものだが、本当は土蜘蛛を退治するどころか妖術に苦しめられているのは頼光と見せかけて実は、将軍徳川家慶であり、国家危急の時に惰眠をむさぼっているとの批判が込められている。主君が危機だと言うのにソッポ向く卜部季武と見せかけ、天保の改革の中心人物、老中水野忠邦である。また、着衣の家紋や模様から、他の頼光四天王で碁を打っている渡辺綱は真田幸貫、坂田金時は堀田正睦、湯飲みを持っている碓井貞光は土井利位、土蜘蛛は筒井政憲、矢部定謙、美濃部茂育を指すとされ、他の小物類も当時の人物たちとされる。そして奥にはユーモラスな妖怪たちがいるが、実は天保の改革の被害者たちである。富くじが禁止された富くじ妖怪、歯のないろくろ首には歯なし→噺など寄席の禁止を恨んだものなど、絵のいたるところに隠されている悪政に対する風刺が込められている。江戸の人々は謎を解いては溜飲を下げて大喜びした。

ふむふむなるほどと納得してしまいがちだが、以前から疑問に思っていたことがある。そもそも何故「土蜘蛛」なのかということである。

弾圧を受け被害にあった人々を妖怪に擬えるのなら「百鬼夜行」的なものでも良かったと思うし、体制側の暗示としての四天王や頼光の姿が必要ならば「大江山」の鬼に擬えても良かったのではないか。あえて「土蜘蛛」の設定にしたことに理由はあるのか。

で、これも調べてみた(こういう時ネットは有難い)。

そして「まつろわぬ民」という言葉に辿り着いたもである。まつろわぬ、つまり時の権力(この物語の中では朝廷)に従わぬ勢力を総称して「土蜘蛛」と呼んでいたということなのだ。そして史実でも明らかなように「まつろわぬ民」は尽く殲滅(一部は吸收)させられたのである。この物語の土蜘蛛も同じ運命を辿ったのだが、その怨念消し難く、時を経て妖怪として復活し朝廷に復讐を企てるのである。そのターゲットはもちろん朝廷の軍事的象徴である源頼光だったのである。

そうもうお分かりのように、土蜘蛛やその眷属である妖怪たちに庶民が強い興味を持ちあれこれ詮索し始めた理由は土蜘蛛側の「反体制」という立ち位置にあったのだ。思い入れするべきは頼光御一行様ではなく妖怪たちなのだ。

とはいえ一般に人気のある物語だったとはいえ、元々は能の演目であり(歌舞伎の演目化は明治に入ってから)物語の裏事情(能では謡いで説明されるが)を知るものは少なかったはずだ。国芳側はもちろん理解していたはずだが「分かる人だけ分かってくれればしめたもの」程度の期待だったかもしれない。だが、ものがものだけに、「分かった人」は猛烈に他人に語りたかったであろうことは想像に難くない。

そして出版歴史に残る一大ブームを引き起こすのである。

幕府側は検閲の段階でその意図に気がつていたとは思うが、水野体制に対する恨みは庶民と同じ担当者が見て見ぬふりをしたか、どうせ庶民には分かるまいとたかをくくったか、いずれにしろあとで取り締まる頃には版木は分散し贋作が巷に溢れる「後の祭り」状態だったわけだが。

ところで頼光と土蜘蛛の関係なのだが、物語によれば、土蜘蛛は人間の姿で病に罹った頼光に近づくのであるが、その姿は「女性」だったのでは(だったらよいなぁ)という説もある。殺すチャンスは幾らでもあっただろうに何故襲わなかったのか?最後の最後に(たぶん躊躇して)逆に手傷を負ってしまうのは何故か?等々、なんか色々とドラマを想像しちゃうのである。

芳年にも女性の姿で描いた作品がある(今回の展覧会では展示していない)。

芳年「天延四年秋妖怪土蜘蛛」Warriors89_2

その辺り、この方の考察が面白い。http://bit.ly/1oxigtB

・・・・・

芳年といえば、こんな土蜘蛛も描いている。

芳年「新形三十六怪撰 源頼光土蜘蛛ヲ切ル図」Interview12

この土蜘蛛ね、初めて見た時から「知ってる!」という気がしてならなかった。どこかで出会ったことがあるのだよ。

しばらくして思い出した。

ジブリだ。

Images

『千と千尋の神隠し』の「釜爺」だ。そういや、あれも蜘蛛だったな。

|

« Cubic Earth 〜もしも地球が立方体だったら | トップページ | かご猫: くろのジャンプ 2題 »

国芳」カテゴリの記事

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« Cubic Earth 〜もしも地球が立方体だったら | トップページ | かご猫: くろのジャンプ 2題 »