一時期に比べるとすっかり漫画を読まなくなった。興味が無くなったわけではないのだが、魅かれる作品が少なくなった。話題作も一通り目を通してはいるのだけど、続けて読もうという気にさせるものはほんの一部だ。まぁ、その分、余計な散財をしないで済んでいるのだが。
それにしても、大御所といわれる漫画家を含む大人向け漫画がひどい。何だろうな。ストーリーはともかく「絵」に魅力を感じないんだ。特に人物。表情のパターンが数種類(まるで顔文字だ)、大げさな喜怒哀楽以外の感情はセリフを読まなくちゃ分からないという、いや、中にはまるでコピーしたかのように終始同じ顔というのまであるぞ。小学館ビッグコミック系のあれとかこれとか。顔だけじゃないぞ、身体の構造も解剖学的にどうよ?ってのも多いし、基本があってこそのデフォルメと単なる手抜きとは違うのだ。
いかん。話が変な方向に。
つまり、「とめはねっ!」はそんな中にあって単行本化が待ち遠しい作品のひとつだと言いたかったのだ(同じ掲載誌の「アイアムヒーロー」もね)。
誰かが「正しい少年漫画」と評価していた気がするが、少年ものにありがちな熱血はここにはない。「友情」すら熱く描かれることはない。「努力」はあるが、非常に合理的かつ効率的で、そこに「根性」はない。「勝利」は結果として描かれるだけだ。ストーリーに多少の緩急はあるが、押しなべて日常の中でゆるゆると展開していく。
でも、とても面白い。
メインの登場人物たちのキャラがそれぞれ絶妙に色分けされいて、そのゆるゆるの日常の中での彼等彼女等の言動や絡み方を追うだけで楽しいのだ。そうあれだ、永遠の学園生活。ビューティフル・ドリーマーなのだ(古いね、どうも)。
これは、素材が「書」だからこそ描けた世界なのである。
例えばスポーツの集団競技やバンド活動だったら集団としての明確な目的が生じてしまい、ぐっとシビアさが増してありきたりの物語になってしまう。かといって個人競技はあまりにも「個」に帰結してしまって仲間は脇役もしくは背景同然になってしまう。
文科部系は・・・それだけでは緩すぎて、ほかの要素(恋愛とか)を強調しなくてはならなくなるし。
そう、基本的に個々の取り組む姿勢に焦点を合わせつつも、突出した個人だけにスポットが当たるわけではないし、勝負はあっても勝ち負けに必要以上には(物語ではあの一人を除いて)拘らないという、こんな現場は「書」だからこそ描けたのである。
そう考えれば、主人公が秘めた実力がありながらも欲無く冴えない男子大江縁であることに納得がいくというものだ。
でね、昨年一月からNHKで放映されたドラマ版「とめはねっ!」も大変面白かったのだよ。その時の感想はリアルタイムでブログに記している。第一回はこちら(今読むと上に書いたことと変わらないな。)。http://waretadataruwosiru.txt-nifty.com/blog/2010/01/nkh-5234.html
そのドラマで、もう一人の主人公望月結希を演じたのが朝倉あきという女優なんだけど、この作品に出たことで「書」との縁が深まったらしく、今回NHKBSプレミアムの特番・旅のチカラ「十九歳 書の心を知る」で「書」の本場中国を訪ねたのだ。
実はすでに一回放映されたのだが、大変良質のドキュメントであった。それで、明日再放送があるのでお知らせしておく。
旅のチカラ「十九歳 書の心を知る 中国 西安 女優 朝倉あき」
チャンネル:BSプレミアムhttps://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20110618-10-10837
放送日: 2011年6月18日(土)
放送時間:午前7:45~午前8:43(58分)
「関心空間」の同番組評http://www.kanshin.com/keyword/4754913