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2010年1月 9日 (土)

中春こまわり君「塩田・その四」  ネコは漢字が読めない

剃刀』の収録された志賀直哉の短編集を読んだ。今さら小説の神様を捉まえてこんな事を言うのも失礼だが、予想外の面白さだった。怒りとか悲しみとか極端な感情からではなく、日常生活の中での些細な感情の積み重ねから生じる心の「歪み」と、そこから表出する人間の行動。そんなテーマの物語がいくつか収められているのだが、『剃刀』はその極北の作品と言っても良いだろう。無駄な部分を削ぎ落し、簡潔な状況説明と心の動きの描写のみ。それが却って読み手の(感情的な体験の)記憶を呼び覚まし想像力を刺激する。結末に向かって期待(?)と不安を増幅させられる。そして、時間が止まり凍りついたように静かなラスト・シーン・・・畏れ入りました。

で、『中春こまわり君』なのだが、相変わらず山上本人が楽しんで製作しているようで絶好調の仕上がり。1コマ1コマ隅々まで丁寧に描かれ、ネームやコマ割にも無駄がない。説明過剰にならない分、何度も読むことで細かい発見があり楽しい。あれ何だか上の志賀直哉についての感想と似てきたぞ。ああ、これは、小説の方法論なのかな。いま思いついたことで説明が難しいが、今回の『塩田』シリーズそのものが凄く文学ぽい気もする。かって小説と漫画は別物と発言していた山上だが、これは結構うまく融合してきているのじゃなかろうか。

志賀直哉短編集をもう一度紹介しておこう。

さりげなく人間社会に溶け込んだ犬や猫が今回もいい味出してるなぁ。

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