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2009年3月18日 (水)

大阪ハムレット 3 森下裕美

51ttatni3el__ss500_ どっちがホンマで 
どっちがウソか

言うてる本人すら
わからん時あるやん

ホンマや、と思わず関西弁で膝を打ちたくなるセリフだ。若い頃はその曖昧さに自分で苛立ちを覚えたり嫌悪を感じたものだが、年齢を重ねてくるとそれが処世術の一部になってくる。本音と建前の境界線を濁すことで自らに危害が及ばず人間関係が円滑に進むならと無意識レベルで対応するようになるのかもしれないな。

しかし、このセリフが出てくる話「テレパシー」に登場するお麩工場の社長石田充治の暴君ぶりは強烈だ。従業員や家族に対する言葉は「死ね」と「殺す」がほとんど、ホンマもウソもない、マジだ。半身不随で寝たきりになり言葉が発せなくなってもそのスタンスは微塵も揺るがない。言葉の代わりにパソコンに打ち込まれる単語は相変わらず「死ね」と「殺す」だ。

孫の気遣いや協力もあって彼が円滑な人間関係を望むようになったのは、単に身の危険を感じたから、つまり防衛本能が優先したからに他ならない。彼の言う(打ち込む)「ごめん」や「すまん」は正真正銘のウソなのだ。この展開は凄いなぁ。

冒頭のセリフは、その事実を知った上で、社長の家族の一人が言った言葉だ。それで皆が平穏ならばウソかホンマはどちらでも良いということだろう。

ところで、最後に石田社長が彼の最大の被害者である(そして彼がその復讐を最も恐れる)妻の手をそっと握るシーンがあるが、あれは防衛本能がさせたことか、それとも・・・ウソかホンマか本人すら分からなくなったのか。いや、やはりあれは最後の勝者は誰かが分かった上での敗北宣言だな。妻の登場シーンで夫の状態がずっとこのままであって欲しいと一瞬顔に出る描写もあるし、彼女の「怨念」という発言も単なるボケでは無さそうだったし。

本作には、この「テレパシー」の他に「女忍者の夏」と「あいの探偵」が収録されている。どれにも単なるきれいごとではない人間関係と救いもあるが後味に苦味を残す結末が描かれている。それぞれについてもいつか感想を書きたいな。

今回はこれで。

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