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2009年2月 1日 (日)

単行本「中春こまわり君」         山上たつひこ

待望の、本当に待望の山上たつひこ新作の単行本発売!めでたい。Komawari_2

5年前に「こまわり」で漫画界復帰という報を知った時は嬉しくはあったが、正直何を期待していいのか何を求めていいのか、困惑した気持ちもあった。

単なる懐古趣味での「がきデカ」ワールドの復活に終わることはないとは思っていた。しかし、いかんせん「がきデカ」全盛期の印象が強力すぎる。往年のノリを期待していた者には中途半端な印象、新しい読み手には埋めがたい「ズレ」を感じさせる作品になってしまうのではないかという懸念があったのだ。

そして復帰一作目「妻の帰還」を読んだ印象は・・・「中庸」だった。全てが過不足なく盛り込まれているが突出した印象が残らない。「らしいな」という安心感はあっても「さすが」という満足感は無かった。

しかし単行本としてまとめて読んでみると印象が違う。妻の失踪に絡めて今のこまわりの生活環境や人間(動物)関係を手際よく紹介していて、(山上本人が続ける意思があったかどうかは別として)作品導入部としてばこれ以上はない仕上がりだと思う。また、身内のエピソードを通すことで、「今」のこまわりが「思索」することで作品世界に存在している事を見せているのも上手い。もっとも昔のように「行動」優先の場面もあるところがこまわりらしいが。

二作目「ジュン」以降ではストーリーテラーとしての山上色が前面に出始める。そうそうこの語り口が好きなんだよ。恨み、妬み、嫉み、僻みに根ざしたトホホな人間ドラマと妄想的蘊蓄と暴走する比喩表現、理想や夢を求めても現実はこんなもん当事者さえ良ければ全て良しというある種の達観、だが決して悲観的ではない(楽観と言うほど能天気でもない)。小説も含めて山上作品に慣れ親しんだ者には堪りません。

ただし、「がきデカ」しか知らない読み手はどう評価するのか気にはなる。表紙につられて購入する人も多そうだ。書評が出るのが楽しみではあるが、評価は分かれそうだな。

そうそう、「ジュン」の回に登場する土佐犬(舟木一35歳)は80年代後期の中編「主婦の生活」に登場した土佐犬直助の子孫かもしれない。直助、大好きだったな。彼が作品の中で唐突に言葉をしゃべり出して建物の構造説明をするシーンは山上漫画でもベストに入るお気に入り場面だ。

と、ここで「主婦の生活」を探し出して再読。

Syufunoseikatu これこれ。今読んでも古さを感じさせない面白さ。中春の語り口の原型がここにあるな。直助、やっぱりいいなぁ。カレーの匂いに反応し(何故か)アレを勃起させて仁王立ち場面は初見の時にツボにハマり涙が出るほど笑った記憶がある。今回ももちろん笑わさせてもらった。

「中春こまわり君」の雑誌掲載時の感想など山上たつひこ関連の記事はこちらでどうぞhttp://waretadataruwosiru.txt-nifty.com/blog/cat20225053/index.html

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