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2008年11月22日 (土)

ヒメアノール1 古谷実

連載開始は知ってはいたが(立ち読みを我慢して)単行本化を待ち望んでいた。

ささやかな欲望でさえ叶えることが難儀なゴールのない青春地獄巡り、その結果断ち切られたかのように突然訪れる結末、ハッピーエンドに向けて話が収束しているように見せかけておいて確かな未来は提示されず、予想される現実は悲劇か(第三者にとっての)喜劇かでしかない後味の悪さ、グロテスクさ。代表作であり個人的にも高く評価している「ヒミズ」以降、古谷実の描く作品のテーマは一貫している。が、その後の作品が成功しているかと言うと少し疑問だった。キャラ造形がパターン化して、物語の構成も同工異曲、さらに展開に捻りを加えようとして破綻をもたらし尻切れトンボの連載終了。漫画としての技術スキルは初期とは比べ物にならないほど向上していて「絵」自体に読み手を惹きつける力があるのに残念な印象があった。

ヒメアノール」第一巻 古谷実41eoix1jzbl__ss500_

相変わらずと言えば相変わらずの設定であり話ではあるが、相変わらず読ませる力があるのは流石である。

まだまだ登場人物紹介、少しだけ動き始めた物語、といったところだが、メインの登場人物を気弱だが常識は持ち合わせている普通人森田君と古谷キャラの真骨頂安藤さんの二人にしたのが良い。女性(ユカちゃん)がらみのエピソードは「稲中」以来のギャグ・テイスト炸裂で笑ってしまう(特にカメ・リュックの毒キノコ飯田アイちゃんとのダブルデート場面)。

ところがサブ・キャラの伊藤が登場してから物語の空気感が一変する。人の人生に突然訪れる理不尽な運命の予感が立ち上り始めてページをくくる指も重くなる。

ただでさえ不穏で危険な空気をまとったキャラが殺人がらみのエピソードに関わってくると、サブとしての立ち位置を超えて強烈な印象を残してしまう。前作では殺人犯が物語の空気を支配してしまい展開に破綻をもたらしたと思える部分もあったので、次回以降メインの森と安藤に本格的に絡み始めるであろうこの二人を古谷実がどう描くのか興味深い。

うーむ、立ち読みの誘惑に負けないよう我慢するのは辛いなぁ。

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