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2008年10月 7日 (火)

荒呼吸 1 松本英子

世間的には知名度が低いが気になる漫画家っているよね?

雑誌でサラッと読んだだけなのに絵のタッチや語り口が妙に記憶の底に残って、(その作家の名は覚えてなくても)別の作品に触れた時「ああこれこれ」ってすぐ思い出す、そんな漫画家が結構いるのだ。ただ残念な事に、名を覚えていないことも災いしてそのまま記憶の底へ沈みっぱなしになってしまうものも多い。だからその記憶をサルベージする為に絵柄の確認が一目で出来る書店の平積み陳列は入念にチェックするようにしている。当たり外れはあるにせよ、単行本中心のマンガ読みにとっては、この作戦は思わぬ成果を上げることがあるのだ。特に、新作やヒット作だけでなく担当者の(癖のある)こだわりが反映したセレクトによる平積み展開がある大型書店は新しい発見が多く重宝する(それは漫画に限らず他の書籍でもそうなのだが最近の大型書店は本探しが楽しい)。

そんな手段で購入した一冊516y2efqpyl__ss500_

特集地域によっては購読していた月刊誌「散歩の達人」(以下散達)に若干の異物感を感じさせるルポ漫画を連載していたころから気になっていた。額に「」の字を付けた本人キャラのインパクトもさることながら、その邪悪そうな眼差しから生まれるエグ味を忍ばせたルポの内容が、ともすれば地元よいしょに終始しがちな散達の特集記事に良いスパイスを与えていたのだ。

ルポやエッセイ(もしくは関連4コマ物)を専門とした漫画家は、だいぶ整理され住み分けされてきたとはいえ相変わらず数が多い。競争は厳しく、各自、差別化する為の営業努力を惜しんではいられない。作品の個性や魅力よりも(住み分けされた)題材が優先するようになる。突撃ルポで、子育てネタで、動物ネタで、病気ネタで、露悪/自虐ネタで・・・似たような題材ばかりになり、安易に(限定された)読み手の共感や興味に訴えるモノが増え、一般作品としての完成度は低くなる。繰り返し読むに耐える作品となるとほんの一握りだ。

たかが漫画にそこまで作家性を求めるかってことなのだが、非常に限定された条件の下でさえ抑えきれない個性が炸裂してしまう漫画家だっている。松本英子がまさにそうなのだ。

この「荒呼吸」にも、動物(猫)、病気、露悪、回想等と定番ネタばかり収められてはいるのだが、散達の連載に感じたエグ味が全編に漂っていて、不可思議な読後感を残す。それは残尿感というか、もう一度漫画の世界に入らないとスッキリしないという気分になるのだ。も微量なら薬になり(ホントか?)適度なエグ味は全体の味に奥行きを与える(根拠なしです)ということだし・・・中毒性があるかもしれない。散達の連載の単行本も今度購入してみようと思う。

収録作は、まさに選ばれし者の悲劇『露出魔』、一度は行きたいお狐さまバーが魅力の『稲荷』、人間心理の不思議さに到達する『パニック発作』、人間観察に持ち味発揮の『立ち呑み』(真の自由人に笑った)、猫好きにとってはズルイとしか言えない至福が羨ましい『』など・・・「絵」は決して上手くはないし癖もあるけど面白いことは間違いないぞ。

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