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2008年6月 7日 (土)

こんな映画を観てきた 14       虎の尾を踏む男達

虎の尾を踏む男達(45年)黒澤明NHK BS2 5/9Bf8202716ddd75ed00df7969175d2c7c_2

無い無い尽くしの終戦直前に企画された黒澤4作目。フィルムの確保が難しくあまり尺の長い作品は作れない、ということで(当時の)日本人なら誰でも知っている歌舞伎の演目『勧進帳』なら話の前後をばっさり省略しても問題ないし、なんと言っても「山場」だけで映画が撮れる。しかも主従の絆を描いているので軍部の検閲も問題がなかろう(逆に戦後GHQの検閲に引っかかってしまうのは皮肉だが)。

と、苦肉の策で制作されたと思われる『虎の尾を踏む男達』だが、黒澤が非凡なのはこの古典の世界に榎本健一(エノケン)演じる強力を登場させたことだ。

歌舞伎の舞台そのままに再現しても結果が分かっている物語であるだけに意外性がなく映画的面白みに欠ける。かと言って、極端な改変は物語の魅力を貶める。そこで考え出されたのが、当時の日本の大衆意識を象徴する第三者「強力」の投入だ。

強力の存在は物語の大筋に何の影響も与えない。彼がいなくても義経主従は無事に安宅の関を通り抜けたであろうし、富樫は男を上げ、弁慶は舞を舞ったであろう。しかし、強力の第三者的視線があるからこそ、観客はより身近にそれぞれのエピソードを楽しむことが出来る。そうあたかも観客自身がその場に居合わせているように、豪放磊落で豪傑のイメージの弁慶が見せる統率力と人間性に魅せられ、富樫の心の動きにハラハラしその決断に喝采する、梶原の使者(久松保夫が良い)の蛇のようなしつこさに辟易し、義経公の美しさに息を飲む。そこには映画的楽しさが満ちているのだ。

しかも、この強力役が当時の喜劇王といわれたエノケンであることが、堅苦しくなりそうな映画に軽妙なテンポをもたらし、笑いの要素が観客の共感をさらに強めたのだと思う。誰もが一度は真似したであろう「六法を踏む」見せ場を弁慶ではなく強力が見せたことはまさに観客一人一人の代表である榎本健一の面目躍如たる場面だろう(こけるし)。

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