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2008年5月27日 (火)

こんな映画を観てきた 13    一番美しく

一番美しく(44年)黒澤明NHK BS2 5/8放映250pxichiban_utsukushiku_poster

戦意高揚、国策映画、献身的労働、等々、余計な時代的フィルターが重なって若い頃から一番苦手な黒澤映画だった(DVDの黒澤全集は所有しているが、この作品だけは一度もプレイしていないぐらい)。今回放映がなかったら2度と観ることはなかったかも知れない。

そして、これは思いのほか楽しめた。

「辛いことも悲しいこともあるけれど皆で前向きに目標に向かって頑張りましょう」という題材は決してこの時代だけのものではない。スポ根(女子バレーとかね)、プロジェクト云々(企業努力とか)、どちらかというと日本人の大いに好む題材だ。最近はドラマでこそ描かれなくはなったが、ドキュメンタリー(特に民放テレビでのお涙ちょうだい系)では定番テーマだ。さすが黒澤、題材の選び方が巧い。しかもこの時代の若手女優が集団で登場、映画内容と同じように現実にも健気に頑張る姿が伝わるわけだから、時代的な背景もあるとはいえ純粋に娯楽映画として楽しむことが出来る。当時の観客もプロパガンダ的要素はあまり強く感じなかったのではないかと思うがどうなのだろう。

それに、黒澤監督はこの作品をすごく撮りたかったのではないかと思う。それは思想的な意味ではなく、軍部の後押しさえあれば金銭的にも時間的にも余裕のある映画製作が出来るという事だ。パンフォーカス撮影等効果的な照明技術の使用、役者たちに合宿までさせる徹底した役作りと入念なリハーサル、編集効果を最大に活かすためのワンシーンでの複数カットの撮影、「贅沢は敵だ」と言いつつ実は(映画的に)贅沢出来たことが後年の重厚で完成度の高い黒澤映画の基礎になったことは間違いない。

そう考えると、余裕のなかった前年のデビュー作『姿三四郎』での(苦肉の策ではあったが)実験性や冒険性がこの作品では希薄なのもうなづける。それは検閲があるからという事もあるが、自身の思う映画作りの王道的な基本を確認したかったのだろう。

それでもやはり、この「皆でガンバロー」的題材は個人的に苦手だ。

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