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2008年5月15日 (木)

こんな映画を観てきた 10    椿三十郎  

用心棒』についてはhttp://waretadataruwosiru.txt-nifty.com/blog/2008/04/post_fd6d.html

椿三十郎(62年)黒澤明 NHK-BS2 05/03放映Tsubaki_s

受験浪人時代、川崎の映画館のオールナイト上映の「黒澤特集」で観たのが初体験。夜中の3時過ぎ、一番睡魔が襲ってくる時間帯だったが、あまりの面白さに眠気が吹っ飛んだ。まだ70年代の初め、60年代の若大将や怪獣映画、駅前シリーズ、社長シリーズなど東宝映画の記憶が生々しい時、その頃既に古典として認識していた(白黒だったし)黒澤映画に東宝娯楽映画の王道とも言える作品があることにも驚いた。メインの俳優は東宝映画でのイメージ通りの起用配役で笑いの要素もかなり強い。同時に観た『蜘蛛巣城』や『悪い奴ほどよく眠る』など徹底的に役者を物語のキャラクターに作りあげる演出とは違う。後年、加山雄三がこの時は黒澤監督を甘く見ていたとも発言している(のちに『赤ひげ』でえらい目にあうわけだが)。

映画作家としての完成度、衝撃度では『蜘蛛巣城』が圧倒的だったのだが、映画の面白さ・楽しさを追求した作品でも黒澤は超一流だった事を知り認識が新たになった。これは黒澤に限らず、後世巨匠といわれる映画監督たちは全員娯楽映画が出発点であり、古典を「お勉強」という姿勢だけで鑑賞するだけでは作品の本質を見誤ることになる。時代や大衆のニーズに的確に応えて良質の娯楽作品を提供する、このある種の職人気質が日本映画の黄金時代を支えてきたのだ。

限られた素材や環境(役者、シリーズ物、正月映画等)だからこそ最大限の効果をもたらす作品を作り出せる、そう『椿三十郎』では助監督時代から培われた黒澤の「職人」としての手腕が最大に発揮されたということだろう。

思えばこの頃まで黒澤は「作家性」と「職人性」のバランスが絶妙だった。両者の比重は作品ごとに違ってはいたが、偏り過ぎることはなかった。それが時代を超え地域を超えて世界中で愛され理由なのだ。

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