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2008年5月14日 (水)

こんな映画を観てきた 9      羅生門 

NHK‐BSの黒澤特集が一段落したので、放映済みの個々の作品について個人的な覚書のようなものを順次書いていく。

羅生門(50年)黒澤明 NHK-BS2 04/05放映Images 

真夏の森の中、影に入ってもむっとするような草いきれが立ち上ってきそうな映像表現。少ない登場人物でありながら濃厚な人間模様の描き方。そして観る者に判断を委ねる斬新な作劇。強い作家性に支えられたこの作品は当時の日本映画の枠を超えていたし、世界の映画常識をも超えていた。

『羅生門』以前に黒澤はいくつかの優れた作品により既に日本ではある程度の成功は得ていた。たまたま東宝争議の時に大映で撮れる事になり、当時としては実験的、より文学的な作品を撮ることが出来たのだろう。それは言ってみれば彼にとって会社の意思に関係なく自分の美学を追求した撮りたいものを撮るガス抜きのようなものだ、彼自身が一般的(大衆的)な評価はそれほど期待していなかったと思う。それはおのずと娯楽第一主義の当時の映画会社との軋轢を生む。さらに次の年(1951年)に公開した『白痴』で経験した編集をめぐっての松竹との衝突など、彼はほとほといや気がさしていたのではないか。もしもこの『羅生門』が海外で紹介されベネチアで賞を取っていなかったら、彼の監督人生はどうなっていただろう。『用心棒』や『椿三十郎』には辿り着いたかもしれないが『七人の侍』は撮れなかったかも、それ以前に自分の企画を通すことが難しくなっていったかもしれないし、金や時間をかけることが許される立場にはならなかったはずだ。そして作家性を強く出した作品はATG辺りでこじんまりと公開みたいな・・・

いや本当にベネチア映画祭でグランプリを取ってよかった(黒澤は出品を知らなかったらしいが)。

異常な状況下でのギラギラとした剥き出しの人間性が描かれる物語の最後に小さな「救い」の場面が置かれている。賛否両論あるが、個人的には上田吉二郎が演じた男の台詞一つ一つに納得してしまう自分がいて理想論だけでは括れない現実が描かれていると思うこともあり、黒澤があれを結論として置いたわけではないと考えている。赤ん坊の未来に「希望」を見出す人もいれば、上田演ずる男(これ以上ないはまり役)に現実味を感じる人もいる。どちらもありなのだ。

まぁ、天の邪鬼な見方をすれば、あの赤ん坊の未来は常に厳しい現実に晒され続けるわけで、杣売りが困窮すれば再び同じ・・・考えすぎだな。

『七人の侍』の菊千代もそうだが、三船はこの手の役をやらせると輝き方が違う。スクリーンの中で動いてこそ最大の魅力を発揮する天性の映画俳優だ。

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