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2007年12月22日 (土)

刑務所の前 第3集 花輪和一

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その驚くべき観察力と記憶力、そして描写力で書き上げられた傑作「刑務所の中」で一般的な人気まで獲得してしまった業の深い漫画家花輪和一。

「刑務所の前」はたぶん刑務所ものの続きとして依頼された仕事だったのだろう。しかし彼はやはり普通じゃなかった。

もともと彼は日本の中世を舞台に業の深い人間たちの因果な物語を描き続けていた。裏今昔物語とも言える世界で異形の者や亡者たちが蠢く世界が持ち味であり最大の魅力だったのだ。

登場人物のほとんどが悲惨な結末(それが喜びだったりする奴がいてややこしい)を迎えるのだが、純な物の象徴として「少女」が登場する話も多い。「少女」は救済の道を示すことが多く、暗くなりがちな話に独特の光を与えている。それは救済を求める花輪自身の分身ではないかと思ってきたわけだ、昔からの読者は。

そこで「刑務所の前」だが。

二つの話が並行して描かれる。一つは従来からの花輪ワールド全開の中世を舞台にした物語。もう一つは花輪が銃刀法違反で逮捕入所する直前までをあくまでガンマニアの視点で描いた物語。中世編で主人公の父が鉄砲鍛冶という以外共通点はほとんどなさそうな二つの話が脈略なく唐突に出入りして、初めて読んだ人は困惑することは間違いない。

しかし、読み進めるうちにいろいろなことに気付き始める。

自分の「業」と冷静に向き合うことができた人間が救済への道を歩むことができる(救済は必ずしも約束されていない)。

中世編では純真な存在として描かれる少女が、現代編では混じりっ気なしの花輪その物「花子」という極悪なキャラクターで登場、あきれるほどの業の深さは救済さえも受け付けない。現実には「救済」どころか「逮捕」されちゃうのだが。

いかん、脈略なく語り始めてしまっている。あと少し。

この3集の各章の扉絵、樹木の絵が次第に不動明王に変化していくのだが、最後の2枚が意味深だ。花輪自身に真の救済は訪れるのか。余計なお世話か。

ある意味業の深い物語を描くことの多い高橋留美子が昔からの花輪和一ファンというのは分かる気がする。

興味があれば「刑務所の中」あたりから読んでみてください。

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